【インタビュー】
魅せる防災 ~パン缶アート~

【取り組み】
時期:2025年9月〜
場所:あべのキューズモール 4階つどいのひろば
形態:街の人たちの参加型防災展示 「アート×防災」の試み
【パートナー(主催者)】
シェアキッチン&スペース botan(ボタン)
Instagram https://www.instagram.com/botan.abeno/
大阪市阿倍野区昭和町の文の里商店街にある、料理も展示もワークショップもできるスペースです。
キッチンのほかに、畳とフローリングの部屋もあり、2階には私設図書館も誕生しました。子どもたちがお絵描きのワークショップをしているときに、隣のキッチンではカフェをやっている。お迎え前にちょっとお茶をして休憩。同時に様々な人・グループが利用できる「場」作りをすることで、偶然の出会いやコラボレーションが生まれます。それは、昭和町という街の特徴でもあります。
場所を提供するだけでなく、botanのあるこの街も、周辺の街や想いでつながるあの街も、そこで活躍する人や取り組み、地域での活動、企業とのプロジェクト、学校のサークル活動など、いろんなキッカケになる情報をどんどん集めています。チラシだけでなく、botanを利用してくれる皆さんや、商店街でバッタリ会った人からも、リアルに情報をゲットできる存在になりたい!と、好奇心いっぱいで日々活動しています。

【取り組みの背景・趣旨(パートナーの言葉)】
災害時の備蓄食は、地域の公民館や学校、大手企業さんにおいても倉庫に眠っていて、表に出る時は、賞味期限切れ間近で配られる時または実際に災害が起きた時です。もちろん家庭でも同じです。一般的に、備蓄食は「どこかにしまっておく」存在と認識されています。
緊急時に命を繋ぐ食べ物や道具が常備されているのに目に触れたり、知ってもらうタイミングはあまりにも少ないと感じています。
倉庫のスペースも必要とし、企業内では、担当者の引き継ぎがうまくいかないと他の備品に埋もれてしまい、いざという時に取り出せなかったりします。また、賞味期限が切れてしまって廃棄することもあります。
まちづくりに防災のキーワードはつきものです。街の防災を考える中で「いざという時にすぐ取り出せる『備』」にアップデートできないだろうか、という課題が見えてきました。
そんな中、防災備蓄品を製造しているパン・アキモトさんに出会い、事業所へお邪魔しました。「パンの缶詰」を災害地に届ける活動をされていること、缶詰のラベルがオリジナルで作れること、そして何より「パンが美味しい」ということを知りました。阿倍野区にはたくさんのアーティストやデザインの専門学校もあり、その街の特性を生かし「アートの力で防災をより身近に感じてもらえないか。それも、日常に防災を感じるタイミングやエリアで。」という思いで防災アートの壁を作ることに挑戦しようと思い、日頃親交のあるあべのキューズモールのご担当者へ相談し、今回の取り組みを進めることになりました。
あべのキューズモール4階にある「つどいのひろば」は、日頃から様々な年齢、職業の利用者さんで賑わう場所です。目的も様々です。そのような場所で「わざわざ防災の展示を見にくる」のではなく「いつもいく場所に防災の展示がある」というシチュエーションを作り出すことができました。
もちろん、展示なので目立つことも重要です。そこで、地域の方、デザイン関連の学生さん、子どもたち、防災に興味のあるたくさんの方々にお声がけし、オリジナルの防災パン缶づめのラベルを描いてもらいました。今回のこだわりは、真ん中の「Q」の文字。
キューズモールの「Q」でもあり、救援・救急などの音でもある「キュー」。
Qがいろんなモチーフに変身し、賑やかに壁面を彩りました。
2026年にはまた新たなパンの缶詰で壁をつくります。活動中に災害が発生した時には、被災した地域などへの物資として使えるという可能性もあります。また試食イベントをしたり、地域の子どもたちや学校や施設、必要としている家庭に届けるなどの活用方法も考えていきたいと思います。

【これからの想い(パートナーの言葉)】
「まち」と「人」と「防災」を掛け合わせて繋ぎたい。
防災への取り組みを、もっと身近に。「頑張って備える」ハードルを少しでも下げるために、「アート」と「美味しい」というキーワードを使って、防災グッズの展示に挑戦していきたいです。情熱を持って「美味しいパンの缶詰」を作る企業、まちでアートを表現したいアーティスト、まちで活躍する防災士や防災啓発団体の皆さん、そして、このまちに住むたくさんの人たちの集う企画として取り組んでいきたいです。

【参加者の声】
・備蓄用の缶を子どもの作品として飾れるのが画期的だと感じました。「この中にパンが入ってるんだよ」と子どもにも伝え、有事の際に、私が出さなくても食べることができる食料があるという安心感にもなりました。
・防災イベントで、小さいお子さん向けのWSがあまりなかったので嬉しかった。
どうしても「不安」「怖い」「しっかりしないと」という雰囲気になりがちだが、気負わず取り組めるところが良い。
・街の人たちが描いた絵が並んでいるのが面白いと思った。知っている人の顔が浮かんでほっこりした。
・普段利用するつどいの広場の棚が殺風景だなと思っていたので、賑やかになっていい。
・缶だけでなく、防災の情報がPOPで詳しく紹介されているのがいい。可愛いイラストが雰囲気にも合っている。
【当社ギャザリング担当から】
ショッピングモールにとって防災は非常に大切なことの一つです。災害時にお客様や施設従業員の命を守る運営を行うことは大前提で、さらに視野を広げ安心・安全な街づくりをする役割も担っていると考えております。しかし、日常的に防災を意識し続けることが難しいことも事実だと感じています。
阿倍野という街は、工芸高校があったり、デザイン専門の学校があったりと、アーティスト要素が多い街です。その特徴をうまく活かし防災とアートを掛け合わせる試みをシェアキッチン&スペース botan様からお話としていただき今回の取り組みが産まれました。ワークショップでは、それまで防災用パン缶の存在を知らなかった子が真剣に絵を描いている姿が非常に印象的でした。
地域の方、お客様が主体となった防災啓蒙活動として、館内で展示するという形を通じて、日常に改めて防災を意識してもらうきっかけになったと思います。